「ギィィィィィ。」
古めかしい木の扉を開けるとそこには、ありとあらゆる品物が並んでいた。
回転木馬の馬や巨大な鳥籠など一体誰が求めるのか謎な物ばかりがそこら中に転がっている。
レイラは器用にそれらの間をすり抜けると、奥の洋服が掛けられたコーナーへとすたすた歩いて行った。
店主の一押しと書かれたレインボーカラーの人魚の尾ひれを尻目にリクは、タキシード、銀色のステッキ、シルクハットに眼帯を、
レイラは漆黒の修道服を手にした。
「レイラ、それにするの?もっと可愛いものもあるよ?ほら、これとか。」
淡いピンクのドレスは彼女によく似合いそうだった。背中に小さな天使の羽が生えたシフォンのドレスを見せると、
彼女は悪戯っぽく小首を傾げリクを見上げながら答えた。
「ハロウィンは、死者が蘇る日だもの。誰かが正しい道に導かなきゃいけないでしょ?」
その芝居じみた台詞は、この不思議な店内によく似合っていた。かくして、彼らはそれぞれが納得する形で
仮装用衣装を購入することに成功した。レジでリク達を待っていた店主は、ハロウィンだからと
ショッキングピンクの大きな棒付きキャンディーをくれ、レイラは子供のように瞳を輝かせながら受け取った。

全ての買い物を終え両手に大量の戦利品を抱えた二人は帰路に着いた。
閉店間近の通りには、彼ら以外に歩いている人間はいなかった。黄色のその通りはどうやら、星がテーマらしい。
天井からぶら下がる大小の星にリクは明日に迫ったライブの成功を願いつつ歩いた。
初めてレイラに見てもらうライブ。この緊張と興奮は、初めてステージに立った時に近い感覚だった。
少しでもいいからレイラに自分の大切な物を知ってほしい。それだけで満足だ。
だから、絶対に成功させてみる。

「あれ?忘れ物?」
突然、足を止めた彼女にリクは振り返り尋ねた。
通りの端に位置するこの一帯は、恐らく、ショッピング・モールが出来る前からこの場所にあったのだろう。
この辺りはそういったよく言えば昔ながら、悪く言えば時代遅れの店舗が何軒か見て取れた。
その中で一際小さく、また古そうなお店の前で彼女は熱心に窓から中を覗き込んでいた。
リクのいる場所からは、ただ真っ暗にしか見えないが、何かもの珍しいものでもあるのだろうか。
通りに面した木製のドアの上には、看板が一応、取り付けられていたが、それすらも
文字がぼやけて読めない始末だった。
かろうじて、看板からぶら下がる真鍮の飾りによって、この店が靴屋であることがわかった。
リクはレイラの隣に立つと、彼女と同じように窓の中を覗き込んだ。

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