王冠第二部王冠

第一章
『めくるめく夢の一時はあっという間だった。』


季節が巡りやがて秋の気配が感じられるようになった頃、彼女がみたいと言ったKeinのライブが間近に迫り、
リクはその準備に追われていた。会場は花蓮と初めて会ったあのライブハウス。
当初は知り合いだけを呼んで小規模に行う予定だったのだが、運よくとある音楽雑誌が彼らの特集を組むことになり、
当日の取材を条件に雑誌社持ちで会場を借りることが出来たのだ。
電話片手に事務処理に追われるリクを見て、レイラは自分が言い出したのだからと、準備を手伝うと言って聞かなかった。
結局、最終の飾り付けを手伝ってもらうことにし、彼らは連れだって近くのショッピング・モールに買い出しに来ていた。
ハロウィンにやろうと誰かが思いつきで言い出し、いつの間にか仮装がドレスコードとなり、しかも、店内の飾り付けまで
任されたリクはため息交じりに楽しそうに歩くレイラの後をついていった。
ショッピング・モールはこの一帯で一番大きなスーパー・マーケットを中心に小さなお店が連なる通りが四方に伸びる構造になっていた。
それぞれの通りには、赤・青・黄・緑と四色の色で分けられ、
赤なら太陽、緑は森と各色に応じたテーマやモティーフで彩られていた。
レイラ曰く、ここに来れば粗方の物が揃うとあって週末は、沢山の人で賑わうらしい。
とはいえ、平日の夜の今、通りを歩く人の姿はまばらだった。飾り付けの趣旨と予算を彼女に告げると、
心当たりのお店があるからと率先して歩き出した。勝手知ったる様子で闊歩するレイラの後ろをリクは
綺麗に飾り付けされたお店のショーウィンドウを眺めながらついていった。
商業施設らしくイベントには全力で取り組もうという姿勢が、各店舗のハロウィンの飾りつけからも見て取れる。
何店舗か回り飾り付け用の買い物が済むと、彼女のお薦めだという大きなかぼちゃランタンが飾られた雑貨店で
二人は仮装用の衣装を購入することにした。

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